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囲碁

どうすれば初心者が囲碁を楽しめるようになるのか

「囲碁に挑戦してみたけれど、難しくて挫折した。」
──こうした声を耳にすることは少なくない。

例えば、『ヒカルの碁』に憧れてアプリをダウンロードしたり、本を買ってみたりする。だが、いざ始めてみると「いつになったら対局できるようになるのか?」と、途方もなさに心が折れてしまう人が多いようだ。

今回は、どうすれば初心者が囲碁をもっと楽しめるようになるのかを考えてみたい。


囲碁のルールは簡単!──でも、それが問題ではない

この話題になると決まって、「囲碁なんてルールはシンプルだよ」「将棋の方がずっと複雑だ」というようなアドバイス(?)が出てくる。
しかし、多くの人が「囲碁が難しい」と言うとき、それはルールのことを指しているわけではない。

実際、ほとんどの人は「石を囲めば取られる」という意味も理解しているし、「コウ」のルールも理解することができる。

では何が難しいのか。
それは、「ルールはわかったけど、で、どこに打てばいいの?」という点だ。
皮肉にも、ルール上では「どこに打っても構わない」と書かれているので、余計に困惑するのだ。


終局の予測が非常に立てにくい

囲碁にも当然、勝ち負けがある。だから「勝つために石を置く」ことは誰にでもわかる。
しかし「どこに打てば勝てるのか」が非常に見えにくいゲームなのだ。

将棋ならシンプルだ。相手の玉を取れば勝ちなので、目指すべき方向は「相手の玉がいる側」だと直感的にわかる。そして、いずれ相手とぶつかり戦いが起きる。

だが、囲碁は「地が多い方が勝ち」と言われても、どこから手をつければいいのかがわからない。
広大な19路盤という荒野の中で、どこに向かって走ればいいのかすら見えない──難しいと思わないはずがない。


伝えるべきは「遊び方」ではなく「楽しみ方」

ルール自体はわかりやすい。
しかし、本当に伝えるべきなのはルールではなく、「楽しみ方」なのだ。

囲碁は、ルールを覚えてから楽しさを見出すまでの距離が長すぎる。
そして、本当に楽しめるようになる頃には、すでに初段クラスになっているだろう。


なぜ囲碁の楽しみがわからないのか?

囲碁が楽しめない最大の理由は、状況の優劣がひと目でわからないことにある。

将棋なら、相手の駒を多く取っていれば有利に見える。
対戦ゲームなら、相手のHPゲージが少なければ自分が有利だとすぐに判断できる。

だが、囲碁ではどうだろうか?
9路盤であっても優劣は分かりづらいし、ダメ詰めの終盤でも初心者は1目ずつ数えなければ勝敗がわからない。

勝ち負けを競うゲームで、その勝ち負けが見えない──それでは楽しむのは難しい。


陣地を視覚化できれば楽しめるのか?

では、自分と相手の「確定地」や「地になりそうな範囲」を可視化すれば解決するのだろうか?
それも簡単ではない。

「Color Go Server」という少し変わった囲碁のブラウザサービスがある。
黒白の石ではなく、水や炎といったエレメンタルをモチーフにした石を使い、囲った陣地がそれぞれの大地としてアニメーションで表現されるというものだ。地が常に視覚化され、少年心をくすぐる演出が魅力的だ。

日本発ではなく英語圏のサービスではあるが、新しいものではない。それにもかかわらず、初心者の間で話題になることはほとんどない。

また、「石取りゲーム」として石を取ることを目的にしたゲームもある。
目的が明確なぶん初心者でも楽しめるが、本来の囲碁への移行はやや難しい。

このように、「目的や状況をわかりやすくする」だけではない、解決すべきハードルが存在しているのだ。


どこに石を置けばいいのか?

そして冒頭の話に戻るが、「どこに石を置けばいいのか」がわからないというのも、楽しめない理由の一つだ。
これは初級者になっても多くの人が悩む問題である。

私は、格闘ゲームのように「石の基本形=コマンド表」を作って渡すのが良いのではないかと思っている。
一間トビ、ケイマ、ヒラキ、カカリなど、チョイスできる範囲をあらかじめ提示してしまう方法だ。

しかし、すぐに別の問題が出てくる。


石がぶつかったときはどうするのか?

上記の「コマンド表」では、相手からの攻撃──つまり「応手」──には対応しきれない。

たとえばツケや打ち込みなど、ある程度の対応力がなければ、地を根こそぎ削られてしまう。
一方的に攻められる展開では、当然ながら楽しいはずがない。

ハネ、オサエ、ツケ、シチョウ、カケなどを理解していないと不利になる局面が多く、しかもそれを対局中に直感で見抜くのは難しい。


囲碁は「遊ぶために」覚えることが多い

一見すると囲碁はシンプルなルールのゲームに見える。
だが、まともに「遊べる」ようになるためには、覚えることが実に多い。

それはルールブックに書かれていない、いわば“当然知っている前提”のテクニック群だ。

例えば任天堂の『スマブラ』のルールは「相手をフィールドから落とすこと」。
ルール自体は単純だが、それだけでは楽しめない。
実際には「Aで攻撃」「Bで必殺技」といった操作方法を理解して初めて遊べる。

囲碁では、その「操作方法」にあたるものがルールブックに書かれていないのだ。
よく言われる「まずは隅から打って、次に辺、そして中央へ」では、楽しむには不十分である。

将棋では駒の動きがルールに含まれている。
だが、もしその「動かし方」がわからなければ、将棋も囲碁並みに難しいゲームになるだろう。
歩は前以外に進めるのか? 玉はどこまで動けるのか?──もしわからなければ、初心者お断りの世界だ。

囲碁は「どこにでも打てる」自由なゲームだ。
だがその自由さが、かえって不自由さを生んでしまうという皮肉。
そして「囲碁は自由に打てる」と本当の意味で感じられる頃には、すでに段位者になっているだろう。
多くの人は、そこまで到達する前に挫折してしまう。

ちなみに最新のアプリ「囲碁シル」では、「チョイスバトル」と呼ばれるモードがあり、3か所ほどの候補手から選んで打つことができる。
ただし、「なぜそこに打つのか」の解説がないのが少し残念だ。


今後に期待する改善策

すでに、これらの課題に対して改善の動きは始まっている。
例えば「囲碁シル」などの最新アプリは、これまで挫折してきた人、入り口でつまずいた人に配慮し、敷居を下げる工夫がなされている。

私が特に期待しているのは、中国で開発が進められているという「囲碁の手を言語化するAI」だ。
「銀星囲碁」でも局面に応じた文章生成を行う機能はあるが、実用レベルとは言いがたい。

この中国AIの詳細はまだ明らかではないが、盤面の解説だけでなく、ユーザーのレベルに合わせたサポート──つまり成長を促すAIになる可能性が高い。
一人ひとりに「専属の先生」がつくようなものだと考えれば、囲碁の悩みを解決する新たな希望になりそうだ。

「Senserobots」の技術を見ても、中国の囲碁に対する開発意欲と技術力は日本以上だと感じる。
ロボットやAIと組み合わせることで、囲碁の入り口でつまずき、楽しみを見いだせない人たちを救うきっかけになるかもしれない。

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